2016年8月1日

東京番外地(八九)

 今回只今!コノ文を書きながら、当時を想い出すと涙が滲みやす。ずうっと健サンを思い返したら、あの御方はもう御坊様でしたネ。ほとんど帰依してらっしゃった。
『しかしなサブちゃん、東映を辞めるのは解った。それで役者も諦めるのか?』
『イエ、役者の道は何んとしても、頑張りたいんです。』
『ヨシ、判った!サブちゃん、俗に世間のドロ水に膝まで浸かるって云うけどサブちゃん首迄そのドロ水に浸かる元気あるか?!』
『ハイ、勿論です。』と云ったものの、お先真ッ暗何も見えてない。じゃ今現在お先見えてるか?イヤ見えてない。実にドーモ困ったモンで。何をウロついてんのかねワタクシメは!ま、とにかくそういう塩梅で、健サンの元を辞した。四年辛抱すれば専属俳優になれるのに、三年少しのフリー部生活は終わった。東映に別れをつげた。これからはバイト専門。たっぷり寝てやると少しでもテメーに都合の良いように考えて、不安を薄めた。バイトに精出して楽しく過ごして先の事は考えないフリをして毎日生きていた。ある日、品出しといって、棚に残り少ない商品を補充していたら、江利チエミ<健サンの当時の奥様>さんが店に入ってきた。
『いらっしゃいませ!アノ僕、健サンにお世話になっている者です!』
『あらそうなの、ダンナは今隣のガソリンスタンドにいるわよ。行ってみれば?』
『ハイー!』ってんでスタンドに行くと、
『ヨォー!サブちゃん!久し振りだなー!元気にやってるかぁ?!』
『ハ、ハイ!元気です!』

高倉健さんと

石倉三郎