2014年5月1日

東京で(六二)

実は本当の実は、昔々十四、五才の頃、「ハナ肇とクレイジーキャッツ」が出てきた頃、いっぺんで植木等サンのファンになり、勿論強烈なクレイジーのブームになり、植木師の唄った「スーダラ節」が空前のヒット!次から次へとヒットを出し、テレビを席巻していった。
大阪へ公演で来たときなど、必死で貯めた金で切符を買い、一番前の席で食い入るように見て、休憩時間にロビーで、それこそ当時クレイジーほかザ・ピーナッツ、三人娘等を用して飛ぶ鳥落とす勢いどころか、飛ぶ鳥なんぞ全て落としてしまった感じのプロダクション「ナベプロ」こと渡辺プロダクションの社長、作曲家の宮川泰等ほかに二、三人位いたかな、ともかくそういった大人達が談笑している。

「今日の相棒は人力車〜」


何だか俺は意味もなく興奮してしまい、何も俺が興奮しても仕方ないけど。
とにかく訳もなく気分が高揚してしまい、イヤイヤこの興奮はつまり解っている。
出来もしない事を思っているからだな。
つまりコノ社長に直訴して、植木等サンの弟子になりたいのですが……!と云う一言!だ。
こういう訳の解らない馬鹿な事をすぐに考える己の脳天気さ!
今コノ文を書いていても汗が沸く!!情無い奴め!!
勿論そんな直訴などできる筈もなく、ただ近くでその風景を見てるだけ。
ハナっから解ってる。俺という奴は思うだけで何もできはしないことを。

石倉三郎