2016年3月1日

東京で(八四)

トコロガデアル!Wの野郎さすがに執念深かった。何と俺のような小物を干したんだネ、全く笑ってしまう。つまりはこうである。残りのロケはもう天国のような気分。何しろWの奴、俺に敬語を使うのである。イヤ気持ち悪いの何の、「そんな事しなくていいから、普通でいいのよ。普通で!」って云っても「イエ、済んませんでした。本当、今迄申し訳無かったです。」目も見ないでオドオドしてる。まあ何だっていいやってな事で、俺もテキトーにやっていた。とにかく意味の全くないイビリがないだけで幸せなんだからコッチは。先輩達も、ヨー何だか逆に気味悪いぜ、ま今だけで又東京戻ったら吹き返すんじゃネーカ、だったら今度はキッチリ絞めてやるか。なんて先輩達もその気になってる。何やかんやで無事ロケも終了して、東京に戻って来たら何と撮影所中が知っている。今のように電話なんか影も形も無い頃に。イヤー本当に人の噂は速い!!俺ともうひとりの同輩はまるでヒーローである。大部屋生活何十年という先輩俳優サン達も皆さん喜んでいる。アー俺達は間違ってなかった。ザマーミロてんで。Wの奴は余程、嫌われていたんだなあ。それで全てクランクアップして、次の仕事を撮りながらバイト行って、まあ又いつも通りの日々を過ごしていたある日、健サンから呼ばれて喫茶VANへ行った。思えばVANで健サンにお会いするのは東映に入って以来初めてである。

福井もいいとこだねえ♪

石倉三郎