2016年6月1日

東京で(八七)

 毎日夕方五時過ぎに、翌日のスケジュールを確認する為に東映撮影所に電話を入れるのだが、明日オフ翌日電話するも又、オフ、おかしいそんな訳ある筈がない。この時分まだ映画産業は今とは位べようがない程、制作していた。まだまだ仕出し《役の無いその他多勢》の仕事が無い訳がない。オカシー、ア!なる程コレはWの奴、俺をハライセに干しやがったなと。仕様がネー暫く様子をみるかってんで来る日も来る日も電話入れる。オフだオフだってんで、ヨシ、今度はキチンと話をしようと思ってる頃、バイト先のユアーズに何と(故)山本燐一サンが私めを探しに来てくれた。
「オーサブ、お前一ヶ月近く撮影所に来ないけど、どうした・・・そうかやっぱりWの野郎!お前を干してんな。判った!俺がキッチリ話付けるから、明日九時撮影所に来い!」
「ハイ!解りました。有難うございます!」
「今から少し時間取れるか?」
「ハイ勿論です。」
てんで六本木かなんかのパーに連れて行かれて、さんざ呑ませて頂く。何と云ったってヤマリンさんと云えば泣く子も黙る撮影所中の大番町、健サンの明治大学時代の先輩!勿論、東映でも健サンの先輩。こんな偉い凄い役者が小生ごときの三下役者にわざわざ声をかけてくれて、イヤハヤ有難くって涙でしたネ。それで翌日から又、すんなり仕事が出来るようになり、日常に戻ったんですがネ。ドーモしっくりこない。Wのヤローは小生の顔見るとコソコソ逃げやがる。クソッタレメ!何でこんな奴が月給取ってやがんだろ!アー!腹が立つ!!

むずかしい役ほどやりがいを感じるネ

石倉三郎