2014年4月1日

東京で(六一)

奥深くしまっておいた思い。
つまり、「三木のり平師に弟子入りしたい!」という思いだ。
のり平親父のような役者に成りたい。
今から思うと、何ンと図々しく無謀で小賢しく何ンにも解ってない馬鹿もいいトコですわ。
しかし、コノ時はそう思ったのだから仕方ない。
ガキで素人のいくらか・・・イヤかなりオメデタイ馬鹿なガキが、そう思ってしまったのです。
大阪を出てくる時から、劇団もそうだけど、上手いこと、
「のり平師の弟子になれりゃ最高だぜ」位に考えていて…
しかし、上手い具合いに弟子になれたとしても、
恐らく修業させて戴く身だから当然バイトなんか出来ないだろうし。
バイトが出来なきゃ、オフクロに仕送り出来ない。
なんてことも分ってるし、だから弟子入りの件は忘れたフリをしていたのだか、
健サンのことで店の者達がワーワー騒ぎだしたモンだから、
ヒョイと、その気になってしまった。

「小松政夫とはツーといえばカーだね」


それから例によって、一ヶ月程もアーでもないコーでもないと
又ぞろ馬鹿な考え休むに似たりでラチがあかず、仕様がネーや、
「清水の舞台だ!」と、のり平師の自宅に向かったのですヨ。
しかし結局、自宅玄関の前で、声も出せずにションボリ帰る有様だった。
情けないというか、ま、根性がないんですワナ。
次兄の言う通りです。
「オマエはホンマに阿呆やな。」
唯一の言い逃れは、しかしコレでお母ンには仕送りできるやんけっと。

石倉三郎