2014年9月1日

東京で(六六)

それも天下の大スター高倉健サンですぜ。
「よく会うネー、サブちゃん仕事はしてるの?」
「・・・あ、ハイ。その、すぐそこのユアーズと云うスーパーで働いてます。」
「あぁそう、忙がしい?」
「え、ハイ。ま、そうですネわりと忙がしいですはい。」
「明日、時間あるかい?いや明日から封切りの映画観てよ。これ招待券あげる。」
いやはや参りやした。この時、確実に天に上りましたね。
そんなこんなで、随分と健サンに可愛がって頂いてる内に、ある日、健サンが私に「サブちゃん、俳優目指してるんだって。ここのママに聞いたけど。」
「!!え!!・・・・・イヤ、その・・・ま・・・ハイ・・・」
この時、最中屋のオバさん達やユアーズの面々の云った言葉が、次々浮かんできて、何も喋べれなくなってしまって、汗ばかり出てきていや誠にドコカに消えてしまいたい!と思いましたな。

「天職?料理にうるさいぜ、オレは!コンドル食堂にて」


ふとママとかチーちゃんの顔を見ると、ニヤニヤしてる。あ、これは駄目だ。こんなこといや駄目だ。
よし!何がよし!か判らないけど、とにかくここは何か喋べらなくてはと思い、「まあです。その劇団に通ってましても、月謝を払う日になると持って行けませんので辞めなきゃ仕方ないので、そんな繰り返しです。それにやっぱり無謀だったんです。才能も無いのに」
すると健サンの次の一言、「才能なんて、そんな自分ですぐに決めるもんじゃないねえ。要はヤル気があるかないかだと思うよ。」
「ハイ・・・・・そうかも判りませんネ〜・・・」←何がそうかも判りませんだ!
何だろ、このオレの情ない態度。

石倉三郎