2017年8月1日

東京番外地(百一)

 いやあ嬉しかった。え!?我が目を疑いましたぜ!ホントかいな?!何で?お母ンが死んだら仕送りいらん?訳分からんなあ。まええか、有難いこっちゃーって事で、さすがの私めも、決心がつきましたなあ。ヨシ!バイト止める。役者一本で行く!かくして七年間のバイト生活に区切りをつけ、晴れて役者一本と云う地獄へトボトボと参るわけであります。この頃、新宿コマ劇場、浅草国際劇場、東京宝塚劇場、大阪新歌舞伎座などが私めの主戦場、ひばりサン、島倉千代子サン、村田英雄サン、橋幸夫サン等の歌手の方々の舞台。ヤットコさ、役に付けたのが島倉千代子サンの舞台だった。全く駄目でしたけど、何回か役を丁戴する度に、ま、いくらかはと云う位のモンで、あ〜!情けない、苦しい泣きたい日々なんだけど、何故か先輩同輩等との酒の時間だけは旨い!まだその頃は芝居がハネた後でも、結構楽屋は開いていたので、管理のオッサンが、「もうエエかげん、帰って下さいよ。」と云われるまで、ワーワー飲んでましたな。外で飲むなんてのは、月の内の始めの方で、初日が開いて五日もたてば、もう楽屋酒。楽屋で飲むのは、勿の論の事金が、かからない。酒、ビール等おつまみのたぐいまで、全て看板役者サン達からの差し入れ。誠に有難き世界。看板役者と云うのは、主役の座長の囲りを勤める方々のことで、勿論、座長からの差し入れがもっとも多く、ブランディ、スコッチ、バーボン、ニッカ、サントリー、日本酒、至っては当時の特級一級ばかり。

石倉三郎