2016年10月1日

東京番外地(九一)

 何故ならば、ああ三郎も志半ばで病に倒れた。そりゃ残念だろうけど仕方ないわな、と。思ってくれんだろぉと、云うことですわ。どうですコノ手前勝手な都合良さ。私はやはり楽観主義なのですかネ。尤も見栄っパリではあります。ずうっと後になり、飯もどうにか食えるように成った時、初めて病院で検査した時、判明しましたヨ。この時の血反吐は胃潰瘍だったのですよ。当時、胃潰瘍なんて病名知らないし、血を吐くといえば結核、それもかなり末期。これくらいの知恵しかなかったのですわ。で、一年前のコノ出来事をたまに思い返してはいたんですが、一年たった今、何んでもない、むしろ調子は良い、あれは一体何だったんだろうなんて。頭の隅にほんの少し置いといて、楽しく仕事と遊びに邁進してました。ある日、店のマネージャーが『サブ、お前役者にまだ興味あんのか?』
『モチロン!何よ何かある?』
『オー実はな、俺の知り合いに舞台専門の芸能プロの社長がいて、お前紹介してやろうか?』
『オー是非是非頼みますわ。』何よそれ、もう少し早く云ってくれないかなあ、東映辞めて一年近くたつぜ。何ぞと腹の中で毒づいていた。それでそのプロダクションにお世話になることになり、初めての仕事が帝国劇場で、“春の坂道”現在の松本幸四郎丈、緒方拳丈、松方弘樹丈等の諸先輩方との共演?イヤイヤとんでもない。こっちはただ出して頂いて、ただのやはり仕出しの仕事。曲がりなりにも東映で三年仕出しやってきて、又仕出しかよ!

何でも役はこなすが、大変だ!

石倉三郎