2012年4月1日

大阪時代(三七)

何故かそのトラック運転手というのがカッコ良く見えて、運転手はその同級生ともう一人の二人なのだ
が、荷物を積んだら、今日は京都、明日は神戸とか、朝か昼一番で会社を出たら定時迄帰ってこない。
まあ近場の時は何度も帰社していたが。とにかく颯爽としてんですな〜。
こっちは年寄りと一緒に、ウエス(ボロ布)にグリースをつけて消火器を、ひたすら磨く。風呂場にある
ような小さな椅子に座って、余りいい若いモンの形としてはショッタレていて小っ恥ずかしい。
ともかく学校出てから何だか、不平不満ばかりが己を占めていて、ちっとも落ち着くことがない。
その憂さを晴らすのは酒だけ。ガキのクセにとにかくよく飲みましたなあ。
会社の近くに立ち飲み屋があり、毎晩のように通った。立ち飲み屋ったって、只の酒屋で、別に料理を
置いてある訳じゃない。あまりに安物の客が来るので、仕方なく南京豆だの柿の種だのを置いてるだけ
で、店主も愛想もクソもない。

「二十四の瞳の菜の花畑と鯉のぼり」

でも時代ですかネ!こんな当時、ガキでも平気で飲ましてくれた。今なら大問題ですな。
って、その酒屋の近くに住んでいる職場の班長とまだ二十三、四の男でやたら酒好きの気の良い男が
いましてな。 この班長には良く飲まして貰った。酒の飲み方もこの男に教えて貰った。
まだ若いのに子供が二人、どうも養子らしい。それでだか何だか知らないが、会社が退けて、直に家に
帰った事がない。

石倉三郎