2012年11月1日

大阪時代〜東京へ(四四)

あれだけ反対していた次兄が、東京に住む部屋まで当ってくれた。
やっぱり兄弟なんだなー。嬉しかったな、そしてついに、一月の終りに東京へ向った。
親父とお袋の二人に見送られて、イヤーお袋を見てて、泣けて泣けて、この世の終りかと思ったネ〜。

「なんで後輩のお前が真ん中なんだよ〜」


東京に着いて、その兄キの居たアパートを探し歩いて、
まずは大家サンに会う。実は劇団を受ける為に東京に来て、住み込みで働きたい旨伝えると、
「あゝ、君のお兄サンから聞いてるよ。しかし、俳優サンになるの?どうして又そんな」
イヤハヤ、どうして?って言われても、困りましたな。
「ええ、あのそのつまり人生一回やし、一か八か勝負したろと思いまして。」
すると、
「へ〜お兄サンとは大違いだネー、俳優ネー、凄い事、考えてるネー」
「イヤ、ハー、まあ〜こちらの最中屋サンで一生懸命働きますから宜しく頼みます!!」
「けど、今部屋は、全部塞がってて、Wサンの部屋ったって四畳半でWサンは部屋一杯にベッド置いてるから、大変だヨいいの?」
「ハイ勿論です。大丈夫です!」
てな訳で夜、Wサン等昔の先輩後輩達にも会い、何か門出の祝なんぞしてもらい、
すっかりいい気分になって、さあ寝ようかとなって、Wサンの部屋に入ってみると、成程ベッドの脇が少しだけ空いている。
「よし!ココが俺の城だ。」
早速届いていた布団を敷いてグッスリ寝た。
慣れないWサンに夜中トイレに行く時、何度も踏まれて閉口したが、大きな不安と少しの希望を抱えて俺の第二の人生の初夜は明けてった。

石倉三郎