2013年11月1日
何ンと云ってもコノ婆チャン、鉄火肌で本当に江戸の名残を一杯に残した人で、
(100歳近くまで存命で、十何年か前にあの世に旅出たれた。)
とにかく私が毎日のように顔を出すので、オバサン共々、誠に良くしてもらったネー。
ある時、婆チャンが、
「サブチャンも役者目指してんだったら挫けちゃ駄目だヨ。昔、田宮二郎サンもよくうちに来ててさ。今あんなにエラク凄い人気者になっちゃったけど、あの人もうちに来てる頃はかなり苦しい時だったみたいだよ。だからあの人も辛抱したんだよ。お前も頑張らなきゃあネ!」
「へえー田宮サンもここで飯喰って呑んでたんだあ、こいつあ、俺もあやかりたいネ〜。」
「あの人は二枚目で、グツトいい男だけど、お前サンはそうじゃない
んだから、その分大変だろうけど、辛抱してりゃあ花も咲く時がくるよ。」
「松竹撮影所の大御所 照明 林さんと」 |
と、そこへおばさんが、「お婆チャン、サブチャンにはサブチャンの良さがあるんだから、
ねーサブチャン」
「イヤイヤ、俺は器量も悪いし頭も馬鹿だし、足も短いしなあ。しかし婆チャンよう、
俺にも何か取り得位はあんだろ?」
「当り前だヨ、そんな(芸能界)所へ行くこと自体凄いモンだよ、ハハハ、
見ててあげるよ」
......今これを書いていて、本当に昨日交した会話のように思い出してますよ。
あの時の婆チャンの笑顔、庇ってくれたおばさんの顔。
後年になって何とか喰えるようになって、に顔を出した時、いやはや喜んでくれたなあ、他人様にあれ程、喜んで貰った事はなかったなあ。
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