2014年2月1日

東京で(五九)

 「三郎君、ユアーズは品物が高過ぎるわね。」
「まぁ外国製品ばかりだから仕方ないよ。」
「あんた夜中迄働いて面白いの?深夜1時迄なんて、普通寝てるわよ。」
「イヤこれが、昼間、時間あるから結構使えるんだな。」
「夜中の1時に終ってそれから飲んだくれて毎日朝帰り。体こわすよ。若いからって無茶してたら。」
「ハイ、有難く受け賜っておきやす。」
「何か君、たまに変ななまり方するけど、出身はドコ?」
やっぱりなあ。実は清水の舞台から飛び降りる気持ちって東京弁というか、標準語らしきモノを喋っていたのだが、そりゃバレるはなあ。
「へい、アノ小豆島という処で生まれました。アノ大阪を空襲で焼け出されて、親父の伯母を頼って、そこでワタクシメが生まれたという訳でして。」
「アーそうなの。小豆島ね。いい所でしょう。二十四の瞳よネ。」
「ハイ!そうです。そうです。あの映画に俺の友達が一番下のチビの役で出てんですわ。」
「へぇ〜凄いじゃない。」
何が凄いのか判らないけど、ま、嬉しくて「凄いでしょ」と。

「キリンに好かれちゃった。オレは本物より泡かな!」


するとニコニコ聞いてたママが、「サブチャン、うちには高倉 健サンが来るよ。」
「へえ、凄いネー健サンかあ!」
東京だネ青山だネ。とにかくコノ青山という所はミーハーにはたまらない場所だネー。
アノ高倉 健サンが、こんなちっぽけな喫茶店に(イヤイヤ、ママ、ゴメン)毎日のようにいらっしゃるという。驚き桃の木山椒の木だ。
当時、健サンの事務所がこの青山にあったので、それでとにかく、よくいらっしゃってた。

石倉三郎