1962年生まれ。長崎県出身。
92年、初の劇場公開映画『二十才の微熱』は、劇場記録を塗り替える大ヒット記録。
2作目の『渚のシンドバッド』(95’)は、ロッテルダム国際映画祭グランプリ他、数々の賞に輝いた。
人とのつながりを求めて子供を作ろうとする女性とゲイカップルの姿を描いた3作目『ハッシュ!』(02’)は、第54回カンヌ国際映画祭監督週間に正式招待され、世界69各国以上の国で公開。国内でも、文化庁優秀映画大賞をはじめ数々の賞を受賞。
6年振りの新作となった『ぐるりのこと。』(08’)は、女優・木村多江に数多くの
女優賞を、リリー・フランキーには新人賞をもたらし、その演出力が高く評価された。
7年ぶりの長編となった『恋人たち』(15’)は、第89回キネマ旬報ベスト・テン第1位を獲得したほか、数多くの映画賞に輝いた。
年末年始号
僕は、ぼんやりしてる。『ホンマでっかtv』の人生相談のコーナーに出て、脳科学的に、生物学的に、心理学的にどうしたらいいか本気で相談したい。
かっこいい某メーカーのスニーカーを購入していて、大して履き込んでもいないのにソールが剥がれて浮いていた。捨てるにはもったいないので、強力接着剤を東急ハンズに買いに行けばなんとかなる、と思い続けていた。
そして、満を待して、わざわざ代々木のハンズまで出かけて行き、「剥がれた靴底を貼り付ける強力な接着剤を下さい!」とお願いし、238円のボンドを購入した。
帰り道、近所に住んでいる女優の篠原友希子に声を掛けられた。「橋口さん、すごい考え事しながら歩いているから声を掛けようか迷ったんだけど」と彼女。そこで、僕は、スニーカーを修理するためハンズまで行ったことを話した。「偉い」と言われて、やる気満々で家に戻って、接着剤の説明書も読み込み、さぁと下駄箱を探すと肝心のスニーカーがない。かっこ良かったから捨てるはずはない。でも、ないということは捨てたということだろう。ずーっと修理しようと思い続けていたのは何だったのか?。
好きな黒いカットソーがあった。これもいくらも着ていないのに胸に小さな穴が空いてしまっていた。裏からあて布をして何針か縫えばまだ着れると思っていた。
さあ、そして、今日は裁縫日だと針にも糸を通して肝心のカットソーを探すが、どこにもない。捨てないでおこうと思い続けていたのに、どうやら捨ててしまったらしいのだ。
銀行に通帳記帳に行った。記帳が終わって、その場で確認し、バッグにしまって家に戻り、過去の通帳を置いてあるところに戻し、翌日、溜まった領収書と一緒に整理しようと思って見たら、その通帳がない。・・もう、どうしてか分からない。
年末に、大掃除の真似事でもしようと思い立ち、せめて机の上だけでもとマイペットで拭きだした。机の上で埃をかぶっていた、以前、ヤフオクで落としたブリキのおもちゃを念入りに磨いていると、またもやその金属製の部品がない。たった今、机の上で、丁寧に拭いていただけなのに。どこを探しても見当たらない。大好きだったそのオモチャはもう動かない。「こんなことなら、掃除なんかしなきゃよかった・・」。その日は一日何も出来なかった。
いつも、ちゃんとしようと思っている。「僕は、ぼんやりしてる。だから、いつも何かをするときは、ちゃんとしてよう」と思い続けている。でも、やっぱりぼんやりしてしまってるのだろう。
毎年、年末から年頭にかけては、映画賞の発表が相次ぐ。映画関係者が一喜一憂する季節である。本当は、このことについて書こうと思っていたが、あまりにもぼんやりが続いて、そんな真面目な話がどうでも良くなった。
来年は、もう少しちゃんと毎日を送れるようになりたい、と願っています。切に。