2015年4月1日

スーパーの女

 最近は、個人、家族経営のスーパーを見かけなくなった。そのほとんどが、大手のスーパーや、コンビニに様変わりしたり、駐車場やマンションになって姿を消していく。
家の近所にも、家族経営の小さなスーパーがあって、浪人生だったのか?オタク風の息子がレジに立ってよくお釣りを間違えていた。決して美味しくはないけど、いかにも手作りの煮物や、ふかしたとうもろこし、さつまいもなどの惣菜が置いてありよく利用していたが、数年前にマンションになってしまった。大手スーパーに置いてある、見た目に綺麗な惣菜より味があって好きだったのだけど。
 僕は、スーパー好きである。高校の頃から自炊していたので、今でも一年のほとんどを自炊でまかなっている。そのせいか、スーパーを見かけると、ふらりと入って品揃えをチェックするのが趣味、というか楽しみである。
見かけない地方の食材や、見慣れない商品を見ると夢見てるような気になってつい買ってしまう。だが、一番のチェックどころはレジ店員の仕事振りだったりする。レジのスピード、カゴからバーコードを経て、次のカゴに移した時の並べ方のセンス。それらをじっくり観察すると、そのスーパーの程度が分かる。
 故・伊丹十三監督の映画『スーパーの女』では、スーパー内で起こる悲喜交々が楽しく描かれていた。その中で、スーパーの善し悪しはレジ店員で決まるなんていう話も描かれていた。本当にその通りだと思う。  家の周りには大小様々な5件のスーパーがある。その中でも一番大きな有名スーパーでのこと。
僕は、スイカが大好きなので、夏になると4分の1のカットスイカをよく買って食べている。そのレジ店員は、おそらく30代後半くらいの女性。結婚指輪をしていたのでパートの主婦であろう。
何を思ってか、そのパートさん。僕が置いたカゴからスイカをわし掴みしたのである!。あの、ラップがかかっている赤い部分を!。一番デリケーツなところを!。
あんまりビックリして気絶するかと思った。見るとスイカには、しっかり指の跡が付いている。いつもは我慢するたちの僕も、さすがにこの時は「取り替えていただけますか?」と言いました。「指の跡がついてるでしょ?」というニュアンスを込めて。
そのスーパーでは、買ったレタスの中身が3回続けて傷んでいたり、冷蔵庫に入れて置いた肉が翌日には腐っていたりした。以来、そこで生鮮食品は買わないようにしている。
 ある日、いつものようにスーパーからの帰り道。休憩中の土方のオッサンに呼び止められた。
「兄ちゃん、スーパー〇〇じゃないの?」と。オッサンが言っているのは、近所で最も賑わっているスーパーのこと。僕は、「どうせ安売りスーパーだろう」との偏見から利用していなかった。
「あそこはいいよ。ポイントはキャシュバック。すぐ何千円か返ってくる。ポイントカード作りなよ」と何故か力説する見ず知らずのオッサンと、15分ほど立ち話してしまった。
あのオッサン、未だに謎である。
 しばらくして、そのスーパーを訪れてみた。品物を見てみると別に安売り専門というわけでもない。しかし、午前中にも拘らず混んでいる。売れるから、店員がいつも商品を補充する。客と店員が目まぐるしく動き回っていて活気がある。
肝心のレジを見ると、みんな超細い眉毛の茶髪の女子ばっかりなんだが、これが素晴らしい。キビキビして超早いレジさばき。受けのかごのへの商品の並べ方も申し分ない。
だが、何より感動したのは、隣に立って袋詰めしていた(主任か店長?)男性だ。
袋詰めには僕も自信がある。その僕が見ても、「これはレジ袋一枚では入らないな」と思えた商品を、その人は、あれよあれよという間に見事に一袋に詰めてしまった。「ほう、詰めれるものなら詰めてごらん」と試すような目で見ていた僕は、自分が傲慢だったと思い知った。
商品をレジ袋に詰める。それがどうした?と言われるかもしれないけど、たいしたもんだと思うし本当に感動した。家に帰ってから、商品を一つ一つ丁寧に出しながら、見事な職人技の秘密を確認しては「すげ〜!」と唸ったのだった。
もちろん、その後、ポイントカードを作ったのは言うまでもない。
最後に全国のスーパーのレジの方へお願いです。
スイカのわし掴みはダメ!。食パンの上に牛乳パックのドン乗せもダメ〜!。