1962年生まれ。長崎県出身。
92年、初の劇場公開映画『二十才の微熱』は、劇場記録を塗り替える大ヒット記録。
2作目の『渚のシンドバッド』(95’)は、ロッテルダム国際映画祭グランプリ他、数々の賞に輝いた。
人とのつながりを求めて子供を作ろうとする女性とゲイカップルの姿を描いた3作目『ハッシュ!』(02’)は、第54回カンヌ国際映画祭監督週間に正式招待され、世界69各国以上の国で公開。国内でも、文化庁優秀映画大賞をはじめ数々の賞を受賞。
6年振りの新作となった『ぐるりのこと。』(08’)は、女優・木村多江に数多くの
女優賞を、リリー・フランキーには新人賞をもたらし、その演出力が高く評価された。
7年ぶりの長編となった『恋人たち』(15’)は、第89回キネマ旬報ベスト・テン第1位を獲得したほか、数多くの映画賞に輝いた。
2014年9月1日
先の8月24日、映画『二十四の瞳』誕生60周年記念イベントが行われました。参加者は、スタジオジブリの鈴木敏夫さん、リリー・フランキーさん。そして、僕も加えたオヤジ三人のトークショウ(笑)。とても多忙なお二人を小豆島に招くという、ある意味無謀なお願いだったにもかかわらず、お二人には、快く
OKしていただき実現した次第です。
僕にとっては、2年ぶり二度目となる小豆島の訪問。前回は、『二十四の瞳』のブルーレイの特典映像撮影の為に訪れたのが最初でした。丁度、梅雨時だったこともあり、曇天続きで、美しい瀬戸内海を堪能するというわけにはいかなかったが、今回は、美しい夕景の中をフェリーで渡り、映画村から望む穏やかな瀬戸内の波光にほっと息をすることが出来ました。島の風景は、海があって山がある。小さな平地に家が並ぶ。僕の故郷の長崎に似ていてとても落ち着きます。
さて、トークの方ですが、会場には五百人の観客の皆さんが来て下さいました。遠く東京からの来て下さった方もいたそうです。僕の不慣れな司会のせいで話題が飛びまくってしまいましたが、リリーさんが上手く突っ込みを入れてくれて笑いに変えていただき助かりました。ああいうところ、本当にあの人は上手いなぁ。
鈴木さんとは、実は番組以外でゆっくりとお話出来たのは初めてだったのですが、すごく率直で賢い方だなあというのが印象でした。
腰を悪くされているということで、それを押して普段聞くことのできない宮崎駿監督との作品作りの秘話のあれこれを話して下さいました。僕も、テレビや本で色々知っているつもりでしたが、普通のファンの気分で面白いなぁと相槌をうって聞いてしまいました。
また、これからの日本のアニメ界、宮崎監督引退後のスタジオ・ジブリの在り方など、本当に真剣に考えてらして、お話できたことは貴重な時間となりました。
トークでも話題に上がった宮崎監督の引退作『風立ちぬ』は、とても美しい映画でした。
そして、その中では、一人の人間が生まれて来て、夢を持って、誰かと出会い、恋に落ち、情熱を持って好きな仕事を一生懸命にやる。そんな姿が描かれています。
僕は、それが人の幸福だと思っています。にも拘らず、それが、戦争や、理不尽な出来ごとによって踏みにじられることもある。それが人間の世界です。そんなことはあってはならない。あってほしくない。だれもがそう思っているはずなのに、それは起こってしまいます。その事を祈るような気持ちで造られた映画が『風立ちぬ』だったと思いました。
そして、『二十四の瞳』。この映画もまた、同じことを伝えているのではないでしょうか?。大石先生は、「軍人になって戦争に行く」と無邪気に言う生徒に向かって、「行ってほしくない」と言います。生徒は、「先生は弱虫じゃ」と言いますが、「そうね、弱虫ね。でも弱虫でいい」と答えます。それを聞いた校長は、先生を呼び出して叱責します。「そんなことを言ってると“アカ”にされて逮捕されるぞ!」と。大石先生は、ただ「大好きな教え子たちに死んで欲しくない」と思っているだけなのです。それさえ許されない世界。それはどう考えても間違ってる。という当たり前のことを描いているんですが。
何か、戦後、高度成長、バブル、震災を経て、法改正の後に、このタイミングで、『二十四の瞳』の記念イベントで小豆島を訪れ、『風立ちぬ』や『二十四の瞳』について語るというのは、不思議なめぐり合わせを感じました。
機会があれば、『二十四の瞳』をどうぞご覧になって、色んな事を感じてみてください。
このイベントの模様は、『二十四の瞳』映画村のホームページにてその映像の一部が見れるようになります。また、鈴木さんが東京FMでやられている『ジブリ 汗まみれ』でも放送されるそうです。当日、会場へお越しになれなかった方、ぜひチェックしてみてください。