第十五回
紡ぐ記憶
柴田早穂
2023年10月14日(土)~2024年1月8日(月)
移り変わる日々の中で見過ごしてしまいそうな島の小さな記憶たち。鋳造を制作技法として用いる作者が素材採取などのフィールドワークから制作した金属彫刻やカメラマンの坪佐利治氏と共同制作した映像で島の記憶を紡ぎます。
鋳造はさまざまなかたちで対象物の姿やそこに刻まれた歴史をうつしとることができます。鋳物は記憶の造形物となり、私たちの命よりもはるかに永い時間この世界にとどまり、そのうつしとられた記憶を遠いいつかへとつないでくれる存在です。
作品のモチーフには家族や友達とその愛猫の姿など、作者の身近な存在が登場します。それらを鋳造するための鋳型(熔解した金属を流し込むための型)に用いたのは小豆島北西部に位置する小江の海岸で採取した約4000万年前の砂岩の砂です。鋳型に沿って流れ込んだ金属の表面にはこの砂の粒子のテクスチャが刻み込まれます。現代の島の記憶を太古の記憶をもつ砂でつくった鋳型に鋳込んでいると、私やモチーフの存在は大きな時間軸のなかでたゆたいはじめます。
坪佐氏によって映像になった彫刻作品の背景にある、島の姿・ここで暮らす存在・それらを記録に残すこととそのための素材や工程が綿密に織りなす時間。作品の背景にある“今ここにあるかけがえのないいとなみの姿”が静かに輝いてあふれています。
“今”は過去から綿々と続いてきた延長線上にあり、ここからまた未来へとつながっていくという継続性を感じることが現在の私たちの立ち位置を確認する手段であり、そこから未来への議論が生まれてゆくのではないでしょうか。
プロフィール
柴田早穂
大阪府出身、5歳より小豆島で過ごす
東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程工芸研究領域(鋳金) 修了
同研究室助手を経て、現在は地元の小豆島に「宮の森鋳造工房」という小さな工房を構える。
小豆島でのフィールドワークを中心に、土地の記憶を鋳造の“うつしとる”という技法的特性をもちいて記録し、インスタレーションを発表。鋳造ワークショップも開催。
主な活動歴
2023年 「泉屋ビエンナーレ2023 Re-sonation ひびきあう聲」京都・泉屋博古館
2023年 「ヒメとゲナン」香川・はちどり
2022年 安曇野AIR「いとなみのかけら、つながる世界」長野・穂高交流学習センターみらい
2021年 「天空の芸術祭2021」長野・東御市海野宿
2020年 「第9回 財団奨学生と顕彰者による美術展」香川・香川県文化会館
2019年 「音でつくる 音をつくる かたちをつくる」東京・藝大アートプラザ
2019年 「鋳金の幻想」東京・東京藝術大学大学美術館陳列館
2017年 東京藝術大学博士審査展「満ちて空っぽ」東京・東京藝術大学大学大学美術館
2015年 「いものの形展2015」(グループ展)埼玉・埼玉県立近代美術館
主な受賞歴
2014年 東京藝術大学卒業・修了制作展 買上げ
過去の企画展
第一回 | 2017年04月29日~2018年01月10日 | 永瀬正敏 写真展『flow』 ~from“ RADIANCE~光~”a film by Naomi Kawase~ |
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第二回 | 2018年03月01日~2018年07月01日 | 岬の分教場回顧録 池田正輔展 |
第三回 | 2018年07月21日~2018年09月30日 | 親子アートユニット アーブル美術館「大贋作展」 |
第四回 | 2018年11月03日~2019年01月06日 | 見たい!食べたい!会いたい! 島で暮らす7人の女性が撮る小豆島 小豆島カメラ写真展 2018-2019 |
第五回 | 2019年03月23日~2019年06月30日 | Artists Stories『Focus』 vol.1 「A village of stories ~物語達の村~」増田 将大 |
2019年07月19日~2019年09月30日 | Artists Stories『Focus』 vol.2 「帰還Ⅰ」岡田 成生 |
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2019年10月12日~2020年01月19日 | Artists Stories『Focus』 vol.3 「A blank of one hundred」團上 祐志 |
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第六回 | 2020年01月26日~2020年03月22日 | いろいろころころ ~石ころDOTART~ / なかがわ ゆきこ |
第七回 | 2020年03月28日~2020年05月31日 | 安部朱美創作人形展 昭和を綴る物語 -絆- |
第八回 | 2021年03月20日~2021年09月30日 | 大妖怪運動会記念館 |
第九回 | 2021年10月16日(土)~12月5日(日) | 猫と世界を考える2021 ~Think About The World With Cats~ |
第十回 | 2021年12月18日(土)~2022年4月17日(日) 2023年1月21日(土)~4月9日(日) |
小豆島を楽しむ人々 |
第十一回 | 2022年04月23日(土)~2022年09月25日(日) | AO |
第十二回 | 2022年10月08日(土)~2023年01月09日(月) | Dialogu ダイアローグ |
第十三回 | 2023年04月22日(土)~2023年07月2日(日) | 山本タミヱ展”タミ絵” |
第十四回 | 2023年07月15日(土)~2023年10月1日(日) | 影絵芝居「福田うみやまこばなし」3年間の記録 |
第十五回 | 2023年10月14日(土)~2024年1月8日(月) | 柴田早穂 紡ぐ記憶 |
第十六回 | 2024年04月27日(土)~2024年9月1日(日) | 六からかい上手の高木さん 特別展 |